安里繁信のしげ脳vol.336「30代後継者座談会~その1~」
向かって右から安里繁信、インタビュアー幸喜、菊農家SUNSET FARM IKEHARAの池原公平さん、
兼城自動車の兼城力也さん、株式会社上間フードアンドライフの上間喜壽さん。
幸喜)
今日はいつもと違う趣向でお送りしたいと思います。
テーマは「30代後継者座談会」!
3名の30代ウチナーンチュ後継者に来ていただいてるので、
同じくお父様の会社を受け継ぎ成長させてきた安里会長と
ざっくばらんに経営談義をしたいなと思います。
安里)
よろしくお願いいたします!
まずは自己紹介をお願いします。
上間)
株式会社上間フードアンドライフの
代表取締役社長をしています上間喜壽です。
「上間弁当天ぷら店」の二代目で、
今はお店が5店舗あります。
僕は申し訳ないんですが
就職活動をしたくなくて(笑)
大学を卒業してプラプラしてたんですが、
実家の天ぷら屋を手伝うことになって。
そしたら借金が2億あった(笑)
それを返しながらなんとか
売上を5億まで伸ばしてきました。
上間弁当天ぷら店webサイト
https://uemabento.com/
幸喜)
私が行きつけの上間弁当天ぷら店の牧港店で
社員の人材教育について書かれたポスターを見たり
店舗ロゴの作り方を見てすごいなと感銘を受けたんですね。
同じローカルフードとしてブエノチキンが目指す姿はここだ!と思って
facebookで友達申請して美里店のオープンの日に会いに行ったのが
知り合ったきっかけです。
それで池原さんと兼城さんを紹介していただきました。
兼城)
兼城自動車の代表取締役社長をしています、
兼城力也と申します。
僕は高校卒業してからアメリカに留学して経営学を学んで
そこからシアトルの物流会社に入社して
翌年には中国青島での支店立上げを経験しました。
青島で2年間勤めたんですが、
実家に帰るたびに父親が暗い顔をしている。
よくよく聞いてみたら
家業の整備工場に大きな借金があったんですね。
僕のところは2億4千万(笑)
それを聞いて、これは自分を成長させるチャンスだなと思って
沖縄に戻ってきました。
兼城自動車webサイト
http://kaneshirojidousha.com/
幸喜)
そんな状況をチャンスと思えるなんて信じられないです(笑)
池原さんは白いハットにサングラス、という格好ですが
菊農家なんですよね。農家に見えないとよく言われるとか。
池原)
はい、僕は株式会社IKEHARAの代表をしています、
池原公平です。SUNSET FARM OKINAWAという屋号で
菊農家をしています。
僕は東京でアパレルの仕事をしていて、
経営者になりたいと考えていたんです。
何をしようか考えていた時に、
今の奥さんから「実家の農業を会社にしたら」と
アドバイスされたのをきっかけに
実家の菊農家を手伝い始めました。
幸喜さんが言うように、僕が入った頃、
菊農家の方は自分の見た目や
ライフスタイルを大事にしてない人が多いと感じてて
「自分にはこの仕事しかできない」と
ネガティブに農業という仕事を選択してた人も多かったと思うんです。
僕はそれを変えたくて、僕なりのやり方で経営を進めてきて、
2015年に法人化しました。
SUNSET FARM OKINAWA webサイト
http://sunsetfarmokinawa.click/
幸喜)
うちも一緒です!
あえてビンテージ風のかっこいいエプロンをしたり
鮮やかな長靴をはいたりして、
「チキン屋さんに見えない」って言われるようにしてました。
町のダサいチキン屋じゃないぞ、格好いい仕事なんだぞと(笑)
池原)
農家という仕事に
誇りを持ってほしかったんですよね。
そのアイデンティティを
立て直すのが僕の役目でした。
幸喜)
みなさん後継と言ってもやり方はそれぞれですね。
このメンバーで集まってもらったのは、
先日、私の両親のお店「ブエノチキン浦添」の法人化と
私の代表就任パーティーを開催した時に、
このメンバーで「二代目の野望」と題して
トークライブをしたことなんですよね。
その司会を会長にしていただいて。
約40分でしたが、聞いていた方からも
とても面白かった、勉強になったとの声をいただいたので
しげ脳でも座談会をやろうということになりました。
安里)
あのパーティーも手作り感あふれててよかったですよね。
変に背伸びせずにね。
幸喜)
あれが私の精一杯の背伸びだったんですが(笑)
法人化したところでお店の体制や味は変わらないので
パーティーをするつもりはなかったんですが、
会長に
「代表として気合を入れるために
代表就任パーティーはやったほうがいい」と言われて
ハッとして、開催を決めました。
あの時に皆さんのような同じ後継の方で
すでに会社を成長させてきた話も聞けて、
背筋が伸びたというか、、、
同年代でこんなに面白い経営者がいるんだと
すごく刺激になりましたね。
皆さんは楽しめましたか?
池原)
チキンが美味しかったです(笑)!
上間)
それが一番大事だよね(笑)
池原)
僕は安里さんが師匠とおっしゃっている
元副知事の座喜味彪好さんもよく知っていることと、
安里さんのお話に勇気をもらったことがあるので
こうして改めてお話できて嬉しいです。
上間)
幸喜さんの周りには同年代社長はいないんですか?
幸喜)
私の周りは個人事業の方が多くて、
社員を何人も抱える会社の社長という方はあまりいないですね。
なので経営の相談する相手は旦那さんか会長なんです。
上間)
僕ら3人は、経営の先生が一緒なんです。
もともと歯科のコンサルティングをしてる札幌の方なんですが、
たまたま僕が24才の頃に東京で出会って、それから教わってて。
兼城)
僕も上間くんから紹介してもらいましたね。
会長)
僕はね、基本的にコンサルは使わなかった。
いいコンサル、悪いコンサルっているんだろうけど、
僕は経営は自己責任だと思ってるし
彼らはリスクを取らないから
信用できなかったんです。
もちろん否定するわけじゃなくて、
僕の生き方には
合わないということなんですが。
でもね、うちの親父が、僕がまだ社長じゃない頃に
僕のこの性格だから、
僕の角を取らなきゃいけんということで(笑)
コンサルを雇ったことがあるんです。
幸喜)
会長はこう見えて、昔はもっと尖ってたんですよ!
一同)笑!
上間)
安里さんは両親の会社を継がれたんですか?
安里)
僕の場合は1.2代目という感じ。
親父がやってた会社「安信輸送サービス」を手伝いはじめて、
資金的に行き詰まった時期があって
その頃から経営に関わるようになりました。
その会社を伸ばしながら、宣伝という会社を立ち上げて
そこを伸ばしながらまた別会社を立ち上げて、
というのを何社かやって、最終的にホールディングスを作って
親父がつくった会社を吸収したという感じです。
兼城)
じゃあ最初は運送会社からのスタートなんですね。
安里)
そうです。トラックで物を運ぶ仕事です。
その親父の会社に入った最初の頃に、
僕はものすごく生意気でしたから
親父に後継者セミナーみたいなものに入れられたんですよ。
僕をとにかく大人しくさせるために。
幸喜)
「繁信をどうにかしろ」というのが
ミッションだったんですね(笑)
安里)
そう!
上間)
お父様とケンカしてたんですか?
安里)
いや、性格が全く違うんですよね。
親父は家族にひもじい思いをさせないために
事業を起こした人なので実直なんです。
与えられた仕事を一生懸命やればいいという感じで
極力目立たないように控えめに、というタイプ。
僕の場合は、他の経営者の方に負けたくないとか
もっとギャフンと言わせてやる、とか見返してやる、とか
そういうことを思うタイプなんです。
というのも、当時の僕らの仕事は格下の業者扱いだし
事業規模が小さいから
大企業さんからはもちろん対等に見てもらえない。
それをなんとか伸ばしたいという僕の考えと
親父の考えに摩擦があったんです。
池原)
それはすごく大きな違いですよね。
安里)
もう、水と油。全然違う。
幸喜)
しかも二人とも空手やってるから強いんです。
その二人の摩擦は恐ろしいですよ(笑)!
安里)
当時は某ホテルで出入り禁止になるぐらいもめたこともあった(笑)
そんな僕を改心させるために
コンサルタントが開催する後継者セミナーに行かされて。
そこで創業者のいうことは聞かねばならぬと
僕に言ってくるわけですよ。
でも僕が言ったのが
「それなら連帯保証人にサインしてくれ」と。
一同)
なるほど~!
安里)
あなたの言うとおりにするから
責任を取ってくれ、ということです。
そしたら相手は黙るんですよね。
うちの会社に踏み込んでくるなら
それなりの覚悟をしてほしかったんですよ。
それで僕のビジョンについて説明したら
「あなたの言うことは正しい、お父さんを説得します」
と言われてね。
幸喜)
その強気な経験は何歳の時ですか?
安里)
24歳ぐらいかなぁ。
幸喜)
でーじ尖ってますね(笑)
(※でーじ・・・沖縄方言で「すごく」の意味)
安里)
でしょう(笑)
この経験から
「コンサルに身を任せると終わる」と思ったんです。
何をするかとか、どうやるかよりも
大事なのは「誰がやるか」です。
この「誰」に自分がなるわけだから、
ということは
自分の成長が会社の成長になり、
自分の限界値が会社の限界値になる。
だからあえてコンサルを入れずに
手探りでやってきたんですよね。
失敗もいっぱいしました。
池原)
自分でやってみて失敗して勉強して、
というのはすごいことですよね。
安里)
当時ね、周りを見てると
「先生が言ってるからこうする」とか
「銀行がこう言ってる」とか
そういうことをエビデンスにしてる方がいて。
そうじゃなくて、
自分は何がしたいのか?が重要だと思ったんです。
幸喜)
なるほど、鵜呑みにしてはいけないですね。
他人に言われたことを噛み砕いて
最後は自分で判断しないと。
安里)
うん。例えばあのころ付き合ってた税理士の方は
「運送業界はもう成長しないから
大手の下請に入るべきです」って言ってた。
一同)
ええーっ!
上間)
それは戦略じゃないですよね。
安里)
あの頃は大手が沖縄に進出してきた時。
それまで物流にしてもスーパーにしても
沖縄に大手企業っていなかった。
サンエーもまだ今みたいに大きくなかったし、
みんな地場産業だったのよ。
このシンバビルがある西洲の場所も
前は問屋がいっぱいあって、
「沖縄総代理店」というだけで飯が食えたんです。
資生堂を買うならそれを扱う代理店からしか買えない。
それが沖縄の社会の全てだったんです。
建築資材もだし食品もだし、
その代理店の上にはさらに一次問屋とかいて
そこにコストがかかってた。
幸喜)
ああ~「問屋」という言葉、なんか学校の教科書を思い出します。
それぐらい今では昔のことになりましたね。
安里)
それぐらい、あの頃と今の経済は違うんですよね。
池原)
じゃあ安里さんはその頃、今みたいになると考えてたんですか?
安里)
いやいや、全く考えてないよ!
社会や経済の全体図も見えてないし。
ただ精神論だけで、
「こうなりたい!」っていう想いだけで走ってましたね。
幸喜)
ちなみに、会長があんしんの経営に関わりだしてから
どのぐらいで実績がで始めたんですか?
安里)
うーん。
先の話にも出てきた僕の師匠であり
元副知事の座喜味さんにいつも
「お前でなくちゃならない理由がそこにあるか」
と問われていて、その答えを探すために
会社を再生していった感じなんですが。
僕が入った時は年商4億前後で、
営業部隊もいないし社長と経理以外はみんな現場。
人手不足だったので僕が東京から帰ってきて
トラック運転手を始めた。
幸喜)
そして経営に関わり始めて5億、6億、と伸びていったんですね。
池原)
安里さんは経営者になるにあたって
最初に取り組んだこととか、勉強したことはありますか?
安里)
周りに先輩経営者がたくさんいたので
サンプルがあったんです。
その時に勢いがある方もいれば
努力して少しづつ成長する方や
反対に会社を潰してしまう方・・・
いろんな方がいたので、
自分ならどうするだろうと
考えながら学ばせてもらいましたね。
幸喜)
それは本やセミナー以上にリアルですね!
私は常に安里会長の背中から学ばせていただいてます!
安里)
ありがとう!
ちなみに僕は成功事例より
失敗から学んできました。
自分自身の失敗もだし、
友人や知人の失敗談を聞いて
身の肥やしにしましたね。
というのも、成功事例って自分に置き換えにくいんです。
成功って、その人だからできたことだったり、
その時の経済とか環境で状況が全く違う。
単純に真似してもうまくいかないんですよね。
だから成功事例は頭に入れつつ、
失敗から学ぶようにしています。
ちなみに、松下幸之助を教材にするセミナーは嫌いなんですよ。
お前は松下幸之助か!って思ってしまう。
幸喜)
私、本いっぱい持ってますが(笑)
安里)
朝子も僕の失敗から学びなさい(笑)
上間)
ちなみに失敗にはパターンがあるんですか?
安里)
失敗する人には共通点がある。
上間)
それが知りたいです!
安里)
まず、怠け者。会社に朝いない。
ゴルフ三昧。
12時ぐらいに会社に行って、
少し顔だしたらサウナに行って、みたいな。
兼城)
今はいないタイプですね。
安里)
昔はそれが許されてた。
でも、そういう方の会社は衰退していきましたから、
それを見るのが肥やしになりましたね。
最盛期から潰れるまでの5年ぐらいを見たこともあるしね。
潰れる時は早いよ、怖いですよ。
上間)
成功には共通点はないんですか?
安里)
成功はね・・・
90%運だと思う。
一同)運ですか!
池原)
もちろん運を手繰り寄せるための努力を
いっぱいされてるんでしょうね。
安里)
もちろんチャンスが巡ってきた時に
掴み取れる実力がないとダメでしょうし、
そのための努力は否定しません。
でも、努力が必ず報われるかというと、そうではない。
だって従業員さんでも経営者でも、
それぞれの歩幅で必死に生きている。
その努力ってすごいことだけど、
それを活かせてる人と活かせてない人がいるのも事実です。
僕らの会社の成長ってこの12、3年ぐらいなんですが
沖縄でこんな短期間にこれだけ成長した会社ってない。
既得権益で潤ってるわけでもないですから、
それは胸を張って言えることですね。
幸喜)
少し話は戻るんですが失敗例から
肝に銘じたことは何ですか?
安里)
「全ての責任、我にあり」。
幸喜)
なるほど・・。
上間)
うちのコンサルの先生もコンサルに入る前に
6か月のプレコンサルを必ず導入するんですが、
そこでは経営の話は一切しなくて
一番初めに教えられるのが
「全部、自己責任だよ」ということと
全てのことを受け入れる受容、
あとは明るく元気に
経営をしなさいということです。
池原)
僕は今ちょうどそのプレ契約が終わったところで。
そのマインドセットと、考える習慣を教わりました。
なので安里さんのお話を聞いていても
根本は同じなんですね。
安里)
原因は全部、自分にあるんですよね。
いいも悪いも。
幸喜)
この考え方を持っているから、
みなさんポジティブな印象なんですね~。
兼城さんも上間さんも先代の負債が2億と
大変な状況を立て直して今に至るそうですが、
乗り越えてきた自信というか、明るさというか。
そういう雰囲気があります。
池原)
やるしかないですからね(笑)
上間)
他人のせいにすると
自分がコントロールできない状況になってしまって、
それが精神的に一番良くない状況なんですよね。
やっぱり不条理で納得いかないけど
自分の責任だと割り切った後の方が楽ですね。
安里)
その考えをどこまで保てるか、ですよね。
今は衣食足りてるから性善説を唱えらるけど
限界が来た時に果たして今の気持ちを持ち続けられるかが勝負だと思う。
幸喜)
一生そんな状況には陥りたくないですけどね(笑)
話が尽きない後継者座談会。
次回は安里繁信、人生最大のピンチの話!?など、
「その2」に続きます!