2017年11月15日
安里繁信のしげ脳vol.337「『誰が』やるかの大切さ〜京都観光おもてなし大使との対談〜」
安里繁信のしげ脳vol.337「『誰が』やるかの大切さ〜京都観光おもてなし大使との対談〜」

幸喜)
私が娘とともにインフルエンザにかかってしまい
久しぶりの更新となりますが・・・
今日は素敵なゲストの方にお越しいただきました!
島田)
京都観光おもてなし大使を務めております、
株式会社クリップ代表の島田昭彦です。
●株式会社クリップ http://www.clip-fromkyoto.com/
安里)
初めまして、ようこそ!
幸喜)
島田さんは京都の伝統工芸品をリプロダクトして
世界に向けて打ち出したり街づくりをしたりと幅広い活動をされています。
代表的な仕事として、サントリーが手がける
「伊右衛門サロン」というカフェがありますが、安里会長ご存知ですか?

●伊右衛門サロン http://iyemonsalon.jp/
安里)
存じております!
僕も京都は講演会や勉強会で何度も足を運んでいて
大好きな街です。
島田さんは面白い仕事をされてるんですね。
伊右衛門サロンはサントリーが仕掛けているんですか?
島田)
そうです。あれはお茶の「伊右衛門」のブランドをもっと立体展開し、
その中でリアルに人と人が巡り会いお茶を楽しむ目的で作られました。
僕はその場所探しやコンセプト、空間デザインの監修、
開業後の監修を引き受けています。
安里)
へえ、すごく素敵な空間でした。
島田さんは京都ご出身ということですが、
どういった経緯で今のお仕事をされてるんですか。
島田)
僕の実家は京都で家紋を描く仕事をしていて、
今でこそ誇りを持ってますが
10代の頃は実家の仕事も京都も大嫌いで、東京に出たんです。
卒業後はスポーツ雑誌の編集者として
海外で活躍する選手を取材してたんですね。
そこで出会う外国人の方って京都への関心が高いんです。
そうやって外から京都を見る機会があったので、
今はその視点を活かして街づくりや商品のプロデュースをしています。
幸喜)
最近では沖縄の案件も手がけてらして
今回も紅型の海外展開の打ち合わせでご来沖されていたので
こうして場を設けさせていただきました。
島田)
はい、今は沖縄の紅型を海外に伝えるお手伝いなどもしてますね。
やっぱり京都でいくら歴史があるとはいえ
京友禅の着物をそのまま海外に売るのは難しい。
そこでアロハに仕立てることで
日常着にしたらすごく評価をいただいたんですね。
廃れていた京友禅の会社が、
今ではとても盛り上がっています。

安里)
面白いですね。
幸喜)
島田さんが講演などで話されている考えに
「作る力を1とすると、伝える力に5使え」
というものがあるんですが、
私も自分のお店「ブエノチキン」を運営する中で
本当にこれは大事なことだなと感じています。
ウチナーンチュは伝えるのが下手だから頑張らんといけないな、と。
島田)
そうです、自分たちの良さを自分の口で伝えないといけない。
それができれば強いですね。
安里)
最近ではインフルエンサーといわれる
発信力のある人たちがいますよね。
プロダクトアウトからマーケットインに変わってる時代の中で
世の中に求められるものじゃないと残らないわけでしょう。
だからと言って単にいいものが売れる時代じゃなくて、
共感されるものが売れると思うんです。
いかに関心を向けてもらうかの工夫は
ますます必要になるんじゃないでしょうか。
幸喜)
いいものを作っても、それだけじゃあダメなんですね。
安里)
理屈では人は動かないんですよね。
特に最近感じるのは
「誰が伝えるか」も
すごく重要だということです。
これは政治でも同じで、
どんな公約を掲げたら当選できるのかって
よく議論されますよね。
でも、公約そのものも大事ですが
その政治家の魅力や共感される力も
ものすごく大事なんですよね。
小泉さんが郵政民営化を訴えて
小泉劇場とまで言われるブームを巻き起こしましたが、
郵政民営化したらどうなるかってことを
ちゃんと理解して投票した人がどれだけいたかということです。
「なんか分からないけど、この人ならやってくれそう」という期待、
小泉さんという「人」に期待を寄せたんですよね。
島田)
おっしゃる通りですね。
「人」はすごく大事です。
安里)
テレビが伝えた、新聞が伝えた、
っていうのは信頼度が大きい。
でも、今の20代以下の子達は
テレビも新聞も見ないんですよね。
僕の周りの10代は
YouTubeしか見ないと言っている。
僕らの世代は50インチの
テレビが欲しいなんて思ってたけど、
今の若者は「タブレットでいい」
という感性なんですよね。
幸喜)
50インチのテレビは持ち運べないですからね(笑)
そうやって一人一台、一コンテンツを見る時代だと思うと
大ヒットは生まれにくいですよね。
昔なんて、電気屋さんのテレビを町中の人が囲んで見てた!
島田)
そうそう、力道山の試合を見たり。
幸喜)
そうやってみんなで一つの情報、
一つのコンテンツをシェアしてたからこそ
国民的ブームや大ヒットが生まれたり
誰もが知ってるテレビCMが生まれたりしたと思うんですが
今や一人ひとりがyoutubeやネットメディアの違うチャンネルを見ている。
みんなに同じことを一気に伝えるのがとても難しいなと思います。
安里)
あのCMのあの歌ねー!という共感は生まれにくいよね。
島田)
今は大きく勝負するのではなくて、
マイクロだけどエッジの効いたものに移行しています。
東西ドイツの壁を倒したのは
ドリルで開けた一つの穴だったそうです。
力をかけて倒そうとしても倒れなかったものが
一つの穴からガラガラと崩れる。
いいエピソードだなと思って覚えているんですが、
そういうゲリラ的なものが世の中で評価される気がしますね。
安里)
全てに通じることだと思いますね。
そんな世の中だから、
10年前はこうだったという経験値そのものが
これからの時代を作る上では
阻害要因になりうる。
幸喜)
うわ~!恐ろしい!
安里)
以前とはあまりに時代が違うんですよね。
島田)
そうですね。
僕はアイデアの数は
移動距離に比例すると思っていて。
僕も常に国内外を移動していますが、
アジアの僻地に行くと特に面白い。
そこで得たものが新しい発想の源になりますね。
先日行ったブータンでも発見がたくさんありましたが、
安里さんも常に移動されてますよね。
その間にアイデアの発酵があるんじゃないですか。

安里)
それもありますが、
僕は基礎学力を身につけてこなかったことが
発想の源になってる気がします。
僕の中での常識というものがなかった。
幸喜)
なるほど、それがむしろ既成概念を作らなかったんですね!
安里)
もし思春期にたくさん知識をインプットしてたら
今の僕はなかった気がする。
それは誰が決めたの?本当なの?っていう
クエッションを持ったまま大人になったから
今の自分があるのかな、と。
暗記教育を受けてないことが
プラスに働いた稀な例かもしれません(笑)。
島田)
なるほど、その分、自分で考える力がついたというわけですね。
安里)
そうです、
うですね、
この局面をどうまとめるか、
どう納得させられるか、
常に考えなければいけなかった。
幸喜)
確かに、暗記したものから答えを出すという作業をしてこなかった分、
常に自力で答えを出さなきゃいけない。
しかし、これは誰にでも真似できることじゃないですね(笑)
安里)
推奨はできませんね(笑)
島田)
覚えずに自分で考えろ、感じろ、ということですね。
今は覚えるような知識はビッグデータに預けておけばいいわけですから。
安里)
そうでうすね。
そうやって自分で考えていかないと
この国は持たないですよ。
10年後、日本がどこに立ってるかと考えた時に、
日本の上流階級はぜんぶ外国の方、
という時代になっているかもしれない。
幸喜)
インドや中国の方に牛耳られているかもしれない。
安里)
だって観光においても
日本文化のイニシアチブを
外国人であるアトキンソン氏(参考)が牽引してたりするわけです。
僕は彼とも仲がいいので、すごいなと思う反面、
僕ら日本人は大丈夫かよと危機感を抱きます。
(参考)デイビッド・アトキンソン氏
イギリス出身で日本在住の経営者。小西美術工藝社社長で金融アナリストと言う経歴を持つ。
日本の文化財の専門家であり、著書「新・観光立国論」が話題となった。
昨年、安里氏が企画した講演会のため来沖したことをきっかけに親交を深める。
島田)
僕も彼とは京都の家が近いので親しくさせていただいてますが、
もちろん彼の意見は素晴らしいし本質を突いているけれども
迎合して鵜呑みにしてしまうのは良くない。
僕らが自分ごととして考えないと
いい方に変わらない気がしますね。
安里)
僕らなりの答えを出していかないといけませんよね。
マーケティングの概念は共有しながらも主体性は失わずにいたい。
特に地域の人がそれを失ってしまうと、
「ふるさと」という概念も壊れてしまう気がします。
僕らがやらなきゃいけないことを
外国の方ばかりに任せちゃいけないですよ。
最後は「誰がやるの」ということで、
その「誰」に僕らがならなければいけない。
そのために今日を生きてるわけだから、
朝子みたいにインフルエンザになってる場合じゃない(笑)
幸喜)
インフルエンサーどころかインフルエンザになってしまいましたからね~(笑)
今日は病み上がりのガラガラ声で失礼しました!
島田)
今日はお会いできてよかったです。
安里)
また京都の街を案内してくださいね!
ありがとうございました。




Posted by 安里繁信 at 16:01│Comments(0)
│しげ脳(対談形式)
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